【ベトナム就職者談Vol.35】小倉哲さん/レストラン経営

小倉哲さん/レストラン経営

今回紹介するのは、自分のこれまでの経験をフルに活かし、レストランを経営されている小倉哲(さとし)さんです。
大学では文学部哲学科に所属されていましたが、卒業後はIT関係の職に就き、そこから現在のレストラン経営に至ったという小倉さん。
一見するとどれも関係がないようですが、すべてが繋がって今の自分がいる、と考える小倉さん。
彼のこれまでの経験、そしてベトナムに来てからの彼の考え方の変化に迫ってみたいと思います!

小倉哲さん

インタビューアー(以下大岡):自己紹介をお願いします!
小倉さん(以下小倉):千葉県出身の34歳、小倉哲(さとし)と申します。金融系のITで7年間働いたのち、ワーキングホリデーを利用して1年間パリとイタリアを周り、その後ベトナムにやってきました。ちょうど3.11のあとの4月に来越したので、もう4年になります。

大岡:色々な経験を経て今ここにおられるのですね。現在は何をされているのですか?

小倉:エルソルというレストランを経営しています。このレストランは1区の古いビルをリノベーションして作りました。私はオペレーション作業ではなく経営面、例えば数字のことやアイデア・戦略作り、メニューやプロモーションなどを行っています。店の中のデザインや空間づくりも私の仕事です。店のオペレーションや作業は、私の奥さんとスタッフが行ってくれています。

大岡:デザインも小倉さんがしておられるんですか。素敵です!ところで、どうしてベトナムでレストランの経営をしようと思ったのですか?

小倉:日本にいるときはIT企業で働いていたのですが、朝9時から夜中の12時まで、土曜も毎週働いていました。電話で夜中に呼び出されることもしばしばで、大変だけど充実はしていましたが、なんだかその生活にしっくりこなかったんですね。それで、元から好きだったワインやチーズ、料理、コーヒーなどの勉強をしていました。

大岡:働きながら様々な知識をつけておられたのですね。

小倉:そして、フランスに行きたい!と思い立って、28歳でワーキングホリデーを利用してフランスへ行きました。結局働いていませんが(笑)、毎日ワインやチーズの勉強をしていました。ワインをテーマにフランス一周もして、イタリアも一周しました。イタリアでは色々な料理を食べました。

ヨーロッパ

大岡:本格的に料理や飲食の道が見えてきましたね。そのままレストラン経営をされたのですか?

小倉:日本に帰国して、経営をしてみたいとはぼんやり思いました。でもまだ1社しか働いたことがなかったし、他の仕事をしてみて、その間に将来のことを考えようと思いました。外国で働きたいと思い、アメリカとヨーロッパには行ったし、次はアジアだ!と思いアジアにしました。ITのスキルを活かしてアジア各国の仕事を探したのですが、最初に受けたベトナムのIT会社から採用していただけたので、ベトナムにやってきました。

大岡:ベトナムのIT会社でのお仕事はどうでしたか?

小倉:日本での労働時間よりは短くなり、かつベトナム人とどのように働けばいいかなど沢山の経験ができました。それでも、休日にも仕事のことが離れなかったり、まだ仕事のやり方をわかっていませんでした。やはり仕事のことだけをずっと考える生活は、自分に合っていないのかなとも思っていました。

大岡:ベトナム人と働いた経験は、確実にレストランの経営に生かされていますよね。しかし、生活スタイルの面では葛藤があったのですね。小倉さんは、起業することについてはどう考えておられるんですか?

小倉:私は早く起業したほうがいいと思っています。というのも、会社で働くのと自分でやるのとではやっぱり勉強量が全然違うからです。保険や人事、住民との交渉から広告、マーケティングまで、すべてのことの責任をもつ。誰にも言い訳できませんし、だからこそ経験値が上がりやすいと思います。

大岡:学べることが本当に多いんですね!小倉さんの働くときの考え方を教えてください。

小倉:会社と子供は似ていると思います。作ろうとして作れるものではなく、育てることが大事。会社は勝手にスタッフや環境が育ててくれるのです。ベトナム人スタッフにガミガミと言っても彼らはついてきてくれません。ベトナムに来たばかりの時はいつも怒ってばかりいましたが、彼らは全く成長してくれませんでした。でもある時から怒るのをやめて、付き合い方を変えました。悪いところではなく、良いところだけを見るようにしました。自分が変わらないと意味がないんだ、そういうプレッシャーで人は変わります。これはみんなが通る道だと思います。

大岡:良いところだけを見ることってすごく難しいことだと思います。でもそれを実践することで、自分の思いがスタッフに伝わるようになったということですね。

小倉:そうですね。あと、自分はこれまでの人生で得た経験やノウハウは、すべて繋がっていると思っています。例えば今までの飲食店での勤務経験ですね。店内のオペレーションや材料の調達から、雑巾の管理や宴会で料理を出すタイミングまで、これが全部今に生きているんです。

大岡:一生懸命何かに取り組むと、確実に自分の糧になるんですね。それが学業でも、バイトでも。ところで小倉さんはベトナムでの滞在は4年になりますが、ベトナムのどういうところが好きですか?

小倉:ゆったりできるところと、食べ物がおいしいところ。あとは、この国の物の少なさから、人生に本当に必要なものがわかるところ。というのは、日本にいると、本当はいらないものでも必要だと思ってしまう錯覚がある気がするんです。もちろん物質的には豊かなんですが、ベトナムに来てみると、それが別に必要じゃなかったと気づくようになりました。原始的な国だからこそ、日常の中の大事なもの、愛する人や仲がいい人、やるべき仕事などコアなところを見ることができるんだと思います。

大岡:そういう感覚を得られるのは本当にいいですね!

小倉:それに日本にいると、自分が能力や物をいっぱい持っていると錯覚しがちですが、ベトナムに来るとそれが全然通用しなかったりする。要は等身大の自分が見えるんですね。また、言葉が通じない状況では、信頼する気持ちだったり自分のふるまいだったり、人間性がコミュニケーションのツールになってくる。そこから相手に信用してもらうしかない。ここでも本当に大事なところ、コアなところが見つけられるんです。

大岡:同じように海外で働く者として、とても同感です。言葉じゃ伝えられない。だから伝えるのを諦めるのではなく、ふるまいや人間性で伝える。難しいことですが、とても大事なことですよね。これから将来にむけての目標などはありますか?

小倉:将来的には、ホーチミンでお店をもっと拡大していきたいと思っています。大きい店でなく、小さい店をたくさん作りたいです。2年ぐらいで5、6店舗は作りたいですね。今は色々やりたいことが多いです。

ワイン

大岡:ぜひたくさん作ってください。全店舗制覇します!(笑)最後に、海外でビジネスをする楽しさを教えてください!

小倉:エルソルは自分がこれまで得た物や見てきたものを具現化したものです。いいものだけを出しているんです。今出している料理も、フランスやイタリアで、そして日本で食べた物の経験から出しているものです。ベトナムスタッフは、見たことがないからわからないものもあります。それを、こういう世界があるのだ!と見せて伝えて、それから作ってもらう。このプロセスが本当に楽しいですね。社長の考え方や経験、人生観によってそのお店の味は変わってくるんです。

小倉さん、ありがとうございました!
海外でビジネスをすることはたくさんの難しいポイントがあると思いますが、その難しいポイントが楽しいポイントでもある。それがよくわかりました。
これからも小倉さんの思いや経験を料理に込めて、お客様に届けてあげてくださいね。

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